百朝集 安岡正篤 五 衆 人(一)

衆人その心を用いいふるや,愛と憎しみの始まりなり。徳は怨の本なり。その親に事ふるや,妻子具はれば則ち孝衰ふ。その君に事ふるや,好業ありて家室不足すれば,則ち業衰へ,爵禄満つれば則ち忠衰ふ。ただ賢者のみ然らず。菅子』 樞言

人間というものをよくみつめた味深い言葉である。こういう衆人が,ただ形式を変えるだけで,一向その心の用い方,心理,道徳というものを変えないで,新しく指導権を握ってみても,果たして世の中がどれほどよくなるであろうか。現代の社会運動家は一様に甚しく外を責めることを知って,一向内を省みない。それで果たして人間も世の中もすくわれるのであろうか。

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